はじめに

man dcを個人的にまとめたもの. (間違ってるかも)

基本的に AtCoder の dc 環境(v1.4.1)で検証をしています. 便宜上, スタックの top から順に, $s_1, s_2, \ldots$と定義します.

入力

?で 1 行入力を受け取る. 入力された内容をマクロとして実行する.

例) 4 2 9を入力 → 4 をスタックに push → 2 をスタックに push → 9 をスタックに push

出力

コマンド処理改行
p$s_1$を出力あり
n$s_1$を出力して popなし
P$s_1$を文字列として出力して pop (数値なら 256 進数にして ASCII コードに変換)なし
fスタック全体を出力 (上が top)あり

数値

整数・小数をスタックに push したいときは単にその数値を書く.

  • 複数の値を連続して push したいときは各数値の間に空白を開ける.
    • 17 9.2 : $17$と$9.2$を push
    • 一部コマンドで代替することで空白を省けるケースもある.
      • K : 0
      • O : 10
  • 負数を表すマイナスは_を用いる.
    • _28 : -28を push
  • $0,1,\ldots,9,A(10),B(11),\ldots,F(15)$を, $i$進数($i$は入力基数)の各桁の値として用いる.
    • 429 : $4 \cdot i^2 + 2 \cdot i^1 + 9 \cdot i^0$
    • 23.7 : $2 \cdot i^1 + 3 \cdot i^0 + 7 \cdot i^{-1}$
    • _B7E : $-(11 \cdot i^2 + 7 \cdot i^1 + 14 \cdot i^0)$
    • BE.D : $11 \cdot i^1 + 14 \cdot i^0 + 13 \cdot i^{-1}$
    • yukicoder の dc 環境(v1.3.95)では挙動が一部異なる
      • 1 桁の場合は同じように$0,1,\ldots,15$を表す.
      • 2 桁以上(小数点以下も含む)の場合は, $i$以上の桁は$i - 1$に抑えられる. ($i$進数の各桁は本来$0$から$i - 1$であるべきなので)
        • _A7E : $-(9 \cdot 10^2 + 7 \cdot 10^1 + 9 \cdot 10^0)$ ($i = 10$のとき)

演算

演算に使用した値は(基本的に)pop される. 精度は一部例外を除いて被演算子で定まる.

コマンド処理注意
+$s_2 + s_1$を積む-
-$s_2 - s_1$を積む-
*$s_2 \times s_1$を積む-
/$s_2 \div s_1$を積む$s_1=0$なら何も起こらない(pop もされない). 精度は精度値で指定される.
%$s_2 \ \mathrm{mod}\ s_1$を積む$s_1=0$なら何も起こらない(pop もされない).
~$s_2 \div s_1$と$s_2 \ \mathrm{mod}\ s_1$をこの順に積む$s_1=0$なら何も起こらない(pop もされない). 精度は精度値で指定される.
^$s_2 ^ {s_1}$を積む$s_1$の小数点以下は無視される.
``${s_3 ^ {s_2}} \ \mathrm{mod}\ s_1$を積む$s_1=0$なら何も起こらない(pop もされない). 整数を渡す.
v$\sqrt{s_1}$を積む$s_1<0$なら pop のみ行われる.

スタック操作

コマンド処理
cスタックを空にする
d$s_1$を積む
r$s_1$と$s_2$を swap する
R$s_1$を pop して, スタックの上部$\lvert s_1 \rvert$個を rotate する.$\cdot\ s_1$が正なら, 元の$s_2$が$s_3$に動く方向へ.$\cdot\ s_1$が負なら, 元の$s_3$が$s_2$に動く方向へ.

レジスタ操作

操作するレジスタ名を$(reg)$として表す. レジスタ名は 1 文字で指定する.

各レジスタはそれ自身のスタックを持っている.

コマンド処理
s$(reg)$$s_1$を pop し, $(reg)$に保存する($\neq$スタックに積む)
l$(reg)$$(reg)$の top の内容をスタックに積む
S$(reg)$$s_1$を pop し, $(reg)$に積む
L$(reg)$$(reg)$の top をpop してスタックに積む

パラメータ

  • 精度 : 前述した一部演算を行う際の精度. 0 以上の値.
  • 入力基数 : 何進数として入力するか. 2 以上 16 以下の値.
  • 出力基数 : 何進数として出力するか. 2 以上の値.
コマンド処理
k$s_1$を pop し, 精度に設定.
i$s_1$を pop し, 入力基数に設定.
o$s_1$を pop し, 出力基数に設定.
K現在の精度をスタックに積む.
I現在の入力基数をスタックに積む.
O現在の出力基数をスタックに積む.

文字列 / マクロ

単に表示する, もしくはマクロ(dc の命令列)として実行することができる.

操作するレジスタ名を$(reg)$として表す.

コマンド処理
[hoge]文字列hogeをスタックに積む.
a$s_1$を pop し, 数値なら$s_1 \ \mathrm{mod}\ 256$を ASCII コードとして文字列にしたものを, 文字列ならその最初の文字をスタックに積む.
x$s_1$を pop し, マクロとして実行する.
>$(reg)$$s_1 > s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
!>$(reg)$$s_1 \leq s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
<$(reg)$$s_1 < s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
!<$(reg)$$s_1 \geq s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
=$(reg)$$s_1 = s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
!=$(reg)$$s_1 \neq s_2$なら, $(reg)$の内容をマクロとして実行する.
q実行中のマクロと, それを呼び出したマクロを終了する. qを含むマクロが最上層で行われた場合は exit する.
Q$s_1$を pop し, その回数だけマクロから抜ける. 最上層に到達しても exit しない.

その他

コマンド処理
Z$s_1$を pop し, それが文字列ならその長さを, そうでないならその桁数をスタックに積む.
X$s_1$を pop し, それが文字列なら$0$を, そうでないならその精度をスタックに積む.
z現在のスタックのサイズをスタックに積む.
!$(command)$$(command)$をシステムコマンドとして実行する.
#続く文字列はコメントとして処理される.
:$(arr)$$s_1, s_2$を pop し, 配列$(arr)$の$s_1$番目に$s_2$を保存する.
;$(arr)$$s_1$を pop し, 配列$(arr)$の$s_1$番目の値をスタックに積む.

ゴルフテク

  • k,iで疑似 pop
    • 精度と(入力後の)入力基数は変えても問題ないことが多いので.
  • Xで top を 0 に
    • top が整数であり不要ならXで 0 にできる. (その後は+して消すなり, ループで適当に処理するなり.)
  • [neg] [pos] [x]vrp
    • $x < 0$なら[neg], そうでないなら[pos]を出力.
    • vに負値を渡すと pop のみ行われることを利用.
  • 単に$10$を push したいときはO,Iを使う
    • これを利用してO9^7+で$10^9+7$が表せる.
      • O9 : Oは桁じゃないので, $10$と$9$のように独立の数としてパースされる
      • A9 : Aは桁なので, $10 \cdot 10 + 9 = 109$としてパースされる
  • sで上書きしていないレジスタにアクセスすると, スタックに$0$が積まれる.
  • Pで$0$や$10$を(実質)空文字扱いできる
    • $0$ : ヌル文字
    • $10$ : 改行文字